第37回経絡治療学会学術大会東北大会 in宮城レポート
高橋典子実技についての補足説明「刺入圧鍼」
鍼灸専門家向けの投稿ですので
どうぞご了承ください。
2023年3月25,26日 第37回経絡治療学会学術大会東北大会が、宮城県松島にあるホテル松島大観荘にて開催され、私は同大会にて、実技とシンポジウムを担当させていただきました。

その際のレポートが、医道の日本社様のwebニュースに掲載されています。ご掲載ありがとうございます(^^)
医道の日本は老舗の業界紙でして、私も昭和56年から休刊になるまでの長きに渡り、定期購読をさせていただきました。今でも本棚の多くのスペースを、医道の日本誌が占めています。
5月16日にUPされたこの記事を拝見した際、私の実技の記載に、何カ所か説明の必要を感じた文章があったのですが、そのまま時が過ぎておりました。
ところが、9月に盛岡で鍼灸の学会が開催された際に、会場でお声がけくださった方がこの記事をご覧になっていて、話をしているうちに、私の手技「刺入圧鍼」について、「皮膚から押すもの」と誤解されていることが分かり、これはどこかでご説明しなければと思い立ちまして、この記事を書いております。
3月の学会当日の実技には、40分間という時間制限がありました。短時間に、皆様にわかりやすく説明できなかった私の側に誤解の原因がありますので、この場で補足説明をさせていただきたいと思います。記事の引用はせずに進めますので、記事はリンクからご覧いただきますようお願い致します。
では、始めの切経についてです。
始めは仰臥位で、脈診と仰臥位での切経をするわけですが、その後からすぐ本治法を始めてしまうと、頸肩背部、腰部等の、腹臥位で触れる部位の症状が変化、あるいは改善してしまい、治療前の状態が分からなくなりますので、本治法の前には必ず一度腹臥位になっていただき、状態を確認してから再び仰臥位で治療を始めます。
治療により症状が増えるのではなく「取れてしまう」と実技中には説明をいたしました。
次に、本治法が終わり、側臥位での標治法に移ります。
右下側臥位は説明をしながら鍼をしましたので、刺鍼のスピードもゆっくりでしたが、左下側臥位になっていただいてからは、説明が同じなので通常のスピードで刺鍼をおこないました。
寒冷地では冷え込みのために堅くなる人が多いのですが、それでも強刺激・深鍼でなく浅刺で取ります。
次に、鍼先で圧を加える「刺入圧鍼 しにゅうあっしん」についてですが、これはどなたかから教わった手技ではなく、自己治療と臨床から、私が独自に行っていた方法です。皮膚上からの圧鍼と区別する為に、手技の名称は「刺入圧鍼」と定め、施術録にはそう記載しています。
皮膚上からの圧鍼や、圧鍼していて自然に無理なく刺さればそれで良しとする手技をおこなっている方は多くいらっしゃると思いますが、3月の大会で紹介した「刺入圧鍼」は、少なくとも真皮層(約2㎜)までは刺入していて、抵抗部位からそれ以上鍼を進めないように圧し続けるところに特徴があります。学会当日には「切皮してから圧鍼」と説明しています。
具体的には1㎜程度の切皮から鍼を進めて、先ず抵抗が生じた部位で鍼を止めます。硬結部位であれば、表から2㎜から3㎜程で、僅かな抵抗が捉えられます。この深さは、鍼管から出ている竜頭を、加減なく弾入してしまえば瞬時に入ってしまう深さです。抵抗部位を捉えたら、そこから更に“それ以上刺入が進まないように注意”しながら、それ以上刺さらない程度の僅かな圧を抵抗部位に加え続けるのです。その圧の物理的な力(圧刺激・圧覚)が、水平方向・垂直方向に広範囲に伝わって行って身体に反応を起こし、堅い緊張が緩みます。強刺激の深刺とは違って、その人の身体が許容する程度に緩んでくれるので無理がないのです。
同時に、たとえ真皮層への2~3㎜の刺入であっても、そこはすでに体液があるので、電解質の豊富な、水の豊富な真皮層に、鍼という金属が振動を持って入り、その先端が多水層にとどまって、暖かい「体液」と、それに乗って経絡を循環している「気」が鍼先に集まることが重要なのです。
本治法の後にこの手技をおこなうことによって、堅い硬結を、低侵襲の安全な浅刺で緩めることが可能になります。
刺入圧鍼は、体表からの押圧ではありません。
次に、施術の体勢についてです。
通常、私が刺鍼をする際には、姿勢には特に気をつけていて、丹田を充実させてそこにしっかりと上半身が乗るように、自身の気を安定した状態に保つようにしています。背を丸め、頭部を下げることはいたしません。
きつい体勢でも患者さんの表情を確認するようにお話したのは「風府の外方・僧帽筋起始部の内側を外側に向かって刺入圧鍼」する場合の限定の話です。「風府の場合は特に慎重になる必要があるので、自身の体制はきつくなるけれど、患者さんの表情を見るように」と説明したのです。この場合の患者さんの体位は側臥位です。
この部位は、古典でいう「枕骨」の部位です。霊枢経筋篇に「結ぶ」と記載されている部位で、私はこの「結ぶ」とされている部位を、標治法の際重要視しています。
次に、身体の「物」としての性質についてです。
人体にはエネルギー系としての経絡があり、その循環で身体を保っているわけですが、同時に「物」としての性質があり、限界があり制限があります。使いすぎたり、あるいは動くべき部位を動かさずに動的バランスが崩れたりして経絡の流れが滞ることが続けば、そこに器質的変化が起こります。
また、物の性質上、経絡の流れの滞りやすいところはある程度決まっていて、そこを疎通させなければ、経絡の気が順調に流れなくなります。
「物としての身体」の話は、本治法で精気の虚を補うことが最も大事だが、このような人体の「物」としての性質に対応することも重要で、それが標治法としての役割であるという説明をさせていただいた中での「物」の話なのです。
以上、医道の日本Online
第37回経絡治療学会学術大会東北大会 in宮城レポート高橋典子実技について、補足説明をさせていただきました。
長文をお読みくださいまして、誠にありがとうございました。
高橋典子